企業経営の目的とバリューエンジニアリング(VE)について
バリューエンジニアリング(VE)においては、企業経営の目的は《利益を追求する》、《社会的責任を果たす》の2つであるとされています。
この2つの目的が同時に達成されなければ企業経営は成り立たないと、VEの教科書とも呼ばれている「新・VEの基本」に書かれています。
「同時に達成されなければ」とは書かれてはいますが、利益が確保できなければ社会的責任を果たすこともできない、とも書かれています。
一般に企業経営の目的として強調され、重要視されていることなので、VE特有の考え方というわけではありませんが。
しかし、「売り上げを減らそう」という一般とは真逆の経営方針を打ち出し、2012年の開業以来、盛況をみせているという企業を知りました。
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売上増や他店舗展開は捨てて、「社員にとって働きやすい会社」と「会社として成り立つビジネスモデル」を両立させているとのこと。
ステーキ丼専門店を経営している企業なのですが、「1日100食」と上限を設定し、100食売り切れた時点で社員は帰る、という経営方針を選択しているのです。
高みを目指し売上増や他店舗展開という方向性は捨てて、 「自分が働きたいと思える会社にする」という思いを最優先されたようです。
「1日100食」という上限を設定することで、仕事が早く終わる代わりに、プライベートを充実させることができることに繋がります。
経営者の中村さんは「家族で晩ご飯を一緒に食べられること」は譲れないとおっしゃっているくらいに。
VE教科書的な見方をすると《利益を追求する》ことを捨てているわけで、片手落ちなわけです。「価値の低い」経営の選択です。
しかし、決して価値の低い企業であるとは思えません。
仕事以外の時間にこそ仕事をする目的があり、人生を豊かにすることができる。そして、それが「価値の高い」ことだ、というのがこの企業における価値基準だということです。
冒頭で、VEにおいては、企業経営の目的は《利益を追求する》、《社会的責任を果たす》の2つであるとされていると書きましたが、VEにおける価値とは次のような式で表されています。
V(価値) = F(ファンクション) / C(コスト)
投入したコスト(リソース)に対して、どれだけのファンクション(目的・効用)が得られるのかどうかが「価値」だ、という式です。
京都のこの企業では、C(業務時間、仕入れコストなど)を抑えて、F(プライベートの充実、社員の満足度向上など)を高めることで「価値」を高めています。
一般でもVEの教科書でも言われている企業経営の目的とは異なるのかもしれませんが、とても「価値の高い」経営をされているのです。
ビジネスの世界では、利益・コストばかりに目が行きがちですが、自分たちにとっての「価値」とは?どんな「ファンクション」を達成したいのか?といった視点から行動・判断していくことが求められると、私は考えます。